第4講 宝探し感覚で有益時間を見つけだす

 

弁護士・公認会計士・通訳 黒川康正

 

  時間は宝である。この宝はとりわけ貴重で希少価値が高いが、毎日のあちこちに案外、こま切れになってたくさん隠れている。私たちはいかに多くの宝を見逃し、持ち腐れになっているか。これは、1度、時間という宝探しをしてみるとよくわかる。

 駅のホームに電車の入ってくるアナウンスがあってから、電車が停止しドアがあいて、じっさいに乗り込めるまでに、どれくらいの時間があるか。計ってみると、通常、1分近くある。この間、折りたたみの傘もたためるし、新聞のベタ記事も読める。
 漫然と電車を待つよりはるかに時間を有効に活かせる。
「あ、こんなところに1分の時間があった」「10分の時間が見つかった」。忙しく切れ目なく帯状につながっているように思える日常のなかにも、小さな宝がかならず発見できるはずである。

 こうした宝探しの探知器としてはストップウォッチがふさわしい。1日のさまざまな行動の所要時間をはかってみるのである。
 電車や人を待つあいだ、順番を待つあいだ、移動時間、仕事へ取りかかるときの助走時間、仕事と仕事の合い間……。ある行動と行動にはさまれたすきま時間や空白時間が意外なくらい多く見つけられるはずだ。また、時間の経過が気にならないような簡単な行動や作業にも、予想以上に時間がかかっていることも発見できるだろう。
 そうして、1日の行動をタイムシートに記してみる。タイムシートというと、1目盛が1時間単位くらいのものを思い浮かべる人も多いが、もっとこまかい単位の、せめて15分とか、できれば6分ごとの行動記録表を作成してみるのがよい。
 こうして分単位で、自分の行動記録をつけてみると、1日の仕事や作業、行動の所要時間が明確になる。同時に、そのムダや空き時間、あるいは改善法や短縮ポイントなどもはっきりしてくる。
 私の事務所でも、6分単位のタイムシートを使っている。Aさんというクライアントとの相談が12分、裁判所までの移動が24分……自分がどう行動し、なんの作業にどれくらいかかったか一目瞭然である。
 なぜ6分刻みかといえば、1時間の10分の1であり、小数の計算がやりやすく、作業ごとの時間集計が容易に計算できるからである。タイムシートによる記録は「時間感覚」を養うのに効果がある。

 1分や2分のすきま時間を見つけてどうなる、そんなの時間のうちに入らない……。そういう人もいるかもしれない。だが、人は短い時間にかなり重要で有意義な行動ができる。
 地震警報が10秒前にあれば安全な場所まで十分避難できる。人気の高いF1レースでは、慣れない人なら1時間もかかりそうなタイヤ交換に10秒もかからず、5~6秒程度ですませている。私はテレビ出演の機会も多いが、ディレクターが終了10秒前のサインを出してからも、まとまったコメントができるものである。
 時間がないとこぼす人にかぎって、こま切れ時間をおろそかにしているものだ。時間がないのではなく、時間を探そうとしないだけのことなのである。
 比較的見つけやすいところにある宝物も、探そうとしなければ見つからない。