はじめに

 

弁護士・公認会計士・通訳 黒川康正


 時間は、いかに有効に使うかが大事で、中身の充実度で価値が決まる。たとえ時間だけがたっぷりとあっても、使い方が下手ならその時間はなかったも同様で無価値となる。一方、上手に使えば、ほんの短い時間でも有意義に活用でき、大いなる価値を生み出す。
 多忙な現代人が仕事もこなし、生活もエンジョイするためには、時間を有効に活用する方法を体得する必要がある。それにより、単に多くの充実した仕事ができるというだけでなく、ゆとりある価値の高い時間を、ひいては有意義な人生を、おくることが可能になる。

 私は現在、黒川康正国際法律会計事務所を経営するかたわら、何社もの役員などもしている。私の事務所では弁護士、公認会計士、通訳の各一般業務のほか、国際租税問題、国際紛争処理、倒産処理、税務訴訟、海外資金調達、国際契約、企業売買(M&A)、海外不動産投資、相続対策など、法律、会計、語学などの重なる未開拓分野について、業務がどんどん拡大している。
 私は毎日、これらのかなり広範な業務を処理する一方、講演に出かけ、そのかたわら、各種のテレビ番組出演をし、新聞、雑誌の原稿を書き、単行本も既に100冊以上著している。
 日々が充実していることはたしかだが、毎日、きちんと7~8時間の睡眠をとっている。定期的な健康診断も受け、健康体だと医者からいわれている。自分の時間もきちんと確保して、多数の友人とも会うし、読書もすれば趣味の将棋も楽しむ。また、年に数回は、ハワイやオーストラリアなど海外で長期の休暇をすごし、乗馬、ヨット、テニス、水泳、水上スキー、パラセーリング、そして釣りなどいろいろ楽しむ…。これが可能なのは、これまで培い、改良し続けている時間活用法のおかげだ。

 私は大学在学中に公認会計士2次試験を、大学卒業後、仕事を持ちながら公認会計士3次試験や通訳試験や英検1級を、また、仕事と家庭を持ちながら司法試験を、それぞれ受験し、合格した。これらの試験の合格率は1%台からせいぜい数%で難関とされている。そこには、私よりはるかに長い時間をかけながら合格できない多数の人がいた。思えば、この人たちに欠けていたのは、時間をフルに活用しようという意欲と工夫であった。
 特に合格率1%台の司法試験の際など、私は法学部卒でもなく、仕事と家庭を持ちつつの挑戦であり、他の受験生と比べて圧倒的に少ない時間と知識量で勝負せざるを得なかった。しかし、本講座で紹介する各種の方法を駆使し、おかげで合格できた。

 本講座では、抽象論ではなく、私自身が仕事中、あるいは仕事と並行して学ぶ中で私が考え出し、現実に利用している具体的な方法について述べる。従って、本講座は、その内容を理解して知識を得ることが目的のものではない。
 本講座を読んで1つでも何か自分のヒントになりそうなことがある場合には、それを各自の目的に役立つように加工し、他の何物にも代えがたい貴重な時間を十分に活用していただきたい。「アイデアは実行して初めて価値がある」のである。皆様が充実した時間をおくり、それぞれの人生を有意義なものとするのに本講が役に立てれば幸いである。

                                            黒 川 康 正