第11講 不意のすきま時間を有効活用する法

 

弁護士・公認会計士・通訳 黒川康正

 

 作業を細分化して、大きな仕事を効率的にこなす。これと同時に考えるべきことは、予定になかった空き時間や不意に発生したこまぎれ時間をうまく活用する方法である。
 仕事が相手の都合で早く切り上げになった。予定より早く消化できた。約束時間が変更になった。こんなときに生まれるすきま時間は、ちょっとした自分への「ごほうび」みたいなもの。
 単にぼんやり過ごしてしまうのも時にはいいが、やりたいことが別にあるのにいつもそうではもったいない。だが、それを利用してまとまった仕事をしたくても、せいぜい5分か10分くらい。それほどまとまった長い時間が空いたわけではない。結局、持て余したり、なんとなく過ごしてしまう……。
 こんなときのために、空き時間にやりたいことをいくつか用意して、手帳などにリストしておくことをすすめる。
 数日内に目を通せばいい資料、今週中にかければいい電話、年内に書く必要のあるはがき、アイデアの整理……など、5分か10分くらいあればサッとすませてしまえる小さな作業を、いつもストックして持ち歩いているといい。
 こまぎれの空き時間にちょうど対応できるような小さな仕事をふだんから準備しておけば、むなしくつぶしてしまうことも避けられる。

 だが、小さい仕事は気がついたときにやってしまうからストックはない。そんな人もいるかもしれない。はっきりいって、そのような人は、時間の使い方が上手とはいえないが、そういう人にも役立つのが、作業の因数分解である。
 まとまった仕事も事前に細分化しておく。作業工程ごとに分解しておく。そして、空き時間が生まれたときに、そのうちの1工程でもこなすようにするのだ。
 大きな仕事は分解できない、重要な仕事はこまぎれにできないと短絡的に考える人が多いが、そんなことはない。
 企画書や報告書を書く作業も、アイデアや構成を練る、メモをとる、疑問点を調べる、調べ たことをもとに決断する、メモをもとに原稿をテープに録音する、テープ内容をワープロに入力する、推敲する……などといくつもに分解できる。案を練ったり、メモをとるくらいなら1分単位の空き時間にも十分可能である。
 100分間かかる仕事をかかえたままでは、10分間の空き時間が生じてもなにもできないまま過ぎてしまう。これをあらかじめ10分ごと10の工程に分解しておけば、10分の1を空き時間にこなせる。
 100分のまとまった時間は1度になかなかとれないが、20分を5回ならとりやすいということもあるだろう。

 うまく荷物を詰めたつもりでもトランクにはすきまができる。しかし、このすきまに大きな荷物は入らない。小さなすきま用にいつも小さな荷物を用意しておく。そのままでは小さな荷物がなければ、大きな荷物を細分化しておけばいいということである。
 しかも、1つの文を文節や単語にまで“ばらす”ように、できるだけ小さく「因数」まで分解しておくのがいい。
 たとえ作業を分解しても、その所要時間の幅より空き時間のほうが短ければ、成果はゼロである。だから、短い空き時間にも対応できるよう、できるだけこまかく作業を分解しておくのが効率いい。
 また、作業工程というのは、通常考えられているより、はるかに小さな単位にまで分解できるものなのである。