第7講 何を先にし、なにを後回しできるか……優先順位をつける

 

弁護士・公認会計士・通訳 黒川康正


 複数の仕事を要領よくこなすコツをもう1つ。何を先にやり、何は後回しでいいか、仕事の優先度をはっきり見定める。つまり、プライオリティ(優先順位)を考えることが肝心である。
 時間の使い方が下手な人は、大事なことを後回しにして、つい楽だからという理由だけで、さほど大事でないことから手をつけたりして、仕事間の優劣が混乱していることが多い。
 その結果、大切なことを後回しにして、時間を浪費するケースが少なくない。
 やるべき仕事の内容やスケジュールを整理して、優先順位を明確にし、優先度の高いものから順にこなしていく。これだけでずいぶん時間はつくれる。不意のことが起きて、残りの仕事を中断せざる得なくなっても、やるべきことはすでにすんでいることになるから、全体にたいした影響も出さずにすむ。

 優先順位を明確にする……これを別言すれば、やるべきことや、やりたいことをかたっぱしから、「むやみに」、「しらみつぶし」的にするな、ということにもなる。
 あらゆることを全部等しい密度、精度、集中度でこなそうという姿勢は「一見して誠実そうかもしれないが、実は非効率のきわみ」であり、その融通のきかなさがあだとなって、他の仕事の影響をおよぼしたり、仕事相手に迷惑をかけたら、誠実でもなんでもなくなってしまう。
 また、すべての仕事の重要度が等しいなんてことはまずない。かならず、やらなくてはいけないこと、やったほうがいいこと、ほとんどやる必要はないことといった、重要度の軽重はあるものだ。その色分けが見えれば、自然に優先順位はつくし、時間をメリハリよく効率的に活かせる。

 そのためには、次のような性格をもつ仕事や作業を把握しておくといい。
(1) いざとなれば、やらなくても大きな支障が出ないこと
(2) 場合によっては、やらずにすむかもしれないこと
(3) 別のことと同時並行でもすませられそうなこと
(4) まとまった時間がなくても、こま切れ時間を見つけて少しずつこなせること
 こういう仕事をいつも認識し、準備しておくと、スケジューリングに融通性が生まれて時間がスムーズにこなせ、不意のアクシデントにも柔軟に対応できる。

 優先順位の高いもの、低いもの、その軽重や性格……。それらを仕事の全体像のなかで位置づける。そして、今日中に全部やる必要はない、優先順位ランク1位から5位までこなせればOK。予想以上に早く終わったらこれもしよう……などと予定に柔軟な幅をもたせておくのが
コツである。