第2講 相続税額の計算法

 

弁護士・公認会計士・通訳 黒川康正

 

 相続税の課税価格や相続税額を自分で計算するのは、容易ではない。しかし、どのようにして算出されるのかを知らないことには、節税対策の立てようがない。具体的な税金対策を考える前に、相続税の計算の仕方をみておこう。

 まず、相続財産の課税価格は「表2」の算式で求められる。
 土地や家屋、預貯金、株式など一切の相続財産から、墓地や一定額以下の生命保険金、退職金など非課税財産を引き、さらに債務と葬式費用を差し引く。これに、被相続人の死亡前3年以内に相続人らに贈与があった場合はその額を加算した額である。
 課税価格は相続人一人ひとりについて計算し、その合計から基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人数)を引いたものが、課税される相続財産の総額となる。合計額が基礎控除額より少ない場合は相続税がかからない。 (なお、平成15年度税制改革によって創設された「相続時精算課税制度」を選択している場合については、講を改めて説明します。)

 

                 表2 課税価格の計算(各相続人について) 

相続財産-非課税財産-債務・葬式費用+3年以内の贈与=各人の課税価格

各人の課税価格の合計-基礎控除額=課税される相続財産の総額

 

 次に、相続税の総額がいくらになるかを計算する(表3)。
 これも、相続人一人ひとりについて算出したものを合計する。ここで課税財産総額に法定相続分をかけるのは便宜上のもので、その人が実際にどれだけ相続したかは関係ない。
 法定相続分に応じた取得金額によって、税率は6段階に分かれている。1000万円以下は10%、3000万円以下は15%というように、金額が多くなるにつれて税率が上がる累進税になっているため、3億円を超えると50%にもなる。
 このような場合、税率を考えるときには、限界税率と平均税率をはっきり区別する必要がある。
 たとえば、取得金額が4000万円あった場合、最初の1000万円分には10%、次の1000万円から3000万円までの2000万円分には15%、最後の3000万円から4000万円までの1000万円分には20%の税金がかかり、合計600万円の税金になる。
 この場合、最後の部分の税率である20%を限界税率といい、全体を平均した税率である15%を平均税率という。

 

                表3 相続税の総額の計算(各相続人について)

課税される相続財産の総額×法定相続分×限界税率-控除額=各人の算出税額

各人の算出税額の合計=相続税の総額

 

 相続税法に規定している限界税率だけでは、税額の計算がやりづらいので、通常は、表4のような速算表をつかう。速算表をつかう場合は、〈税額=取得金額×(限界)税率-控除額〉として税額を出す。

  たとえば、取得金額4000万円の場合は、<4000万円×20%-200万円=600万円>というふうに出す。

 

                          表4 相続税の速算表 

 

法定相続分に応ずる各取得金額

税率

控除額

 

1,000万円以下

1,000万円超~3,000万円以下

3,000万円超~5,000万円以下

5,000万円超~1億円以下

1億円超~2億円以下

2億円超~3億円以下

3億円超~6億円以下

6億円超

   10

   15

   20

   30

   40

   45

   50

   55

       ――

       50万円

      200 

      700 

    1,700 

    2,700 

    4,200 

    7,200 

 

 最後に、現実の相続額に応じた各相続人の税額を計算する(表5)。
 相続税の総額に、実際に相続した財産の按分割合をかけ、各種税額控除額を差し引く。法定相続人でも現実に相続しなかった者があれば、その者は按分割合がゼロとなって、結局は 相続税がかからないことになる。
 逆に相続人が法定相続分より多い額の財産を取得した場合は、この算式によって取得した財産に応じた税額が課される。

 

                 表5 各相続人の税額の計算

相続税の総額×各人の課税価格/課税価格の合計-各種税額控除=各人の税額