第18講 事務的にこなせる作業や手順はどんどん定型化する

 

弁護士・公認会計士・通訳 黒川康正

 

 どんなに新しい仕事、複雑な仕事にも以前の経験や反復でこなせる部分がまじっているものだ。どんなに創造的な仕事にも事務的にこなせる過程がある。
 その事務的な作業をできるだけ機械的に要領よく楽しくこなす。あるいは可能なかぎり短縮化することが、仕事の効率をグンとあげることになる。
 事務的なプロセスをスピーディにこなすには「定型化=マニュアル化」がきわめて有効である。
 電話の応対や郵便物の整理、文書の書き方、コピーのとり方、ファイルの仕方、住所録や名刺の整理など、毎日くり返される日常的な作業やルーティンワークは、できるだけ定型化、標準化し、マニュアルにして文書化しておくのがのぞましい。
 ある作業の手順やノウハウを定型化することの時間的メリットはいくつかある。
 個人の能力や“職人芸”の範囲にとどまっていた技術がオフィス共通の財産となってみんなで共有できる。マニュアルを見れば、入社したばかりの新人でもこなせる。ベテランが貴重な時間を使っていちいち指示したり教えたりする必要がない。
 つまりベテランの時間が省け、単純作業を反復する手間も省略できるから、そのぶん他の作業に専心できて、仕事の質を高められる利点もある。
 複雑な仕事もマニュアルによって簡素化され、ミスや作業の重複などが防げる。マニュアル部分は他の人間にまかせることができるし、複数の仕事の同時並行処理の能率もよくなる。
 このように定型化であらたに生みだせる時間は多い。どんな単純なルーティンワークにしても、そのつど一からくり返したのでは効率が悪いが、定型化によってその過程がずいぶん短縮できるからだ。
 また、定型化すると、その方法の改良点がはっきり見えてくる。漫然とこなしていたのでは明らかでなかった長所や欠点がマニュアルに定着させると明確になってくる。「ここをこう改良すれば、もっと効率がよくなる」ということがわかってくる。
 定型化とは、つまり、「過去の時間と経験の蓄積」を文書などにし、だれにも共通な方法論として定着させることである。過去に時間と労力をかけて開発してきたノウハウをフォーム化することだ。
 そのマニュアルを叩き台として、次回からはさらに応用がきくし、同じことを反復するにしても、ゼロからスタートしなくてすむ。